ep.3 怒られるエッダちゃん。
川のせせらぎと鳥の声が聞こえてきて目を覚ましました。
久しぶりにベッドで寝たら、起きる時に体がベッドに張り付いてるような感覚がしてちょっと驚いたのでした。
ぐっすり寝たらだんだん現在の自分の状況がわかってきました。
ひとりぼっちです。そしてなぜかバックパックがまるごとありません。どこで無くしたのか全く記憶がありません。幸いにもいつも斜めがけしていたポシェットだけは無事でした。
中身は十歳の誕生日に両親から贈られたイシュガルド製のコンパクトとママからもらった豚毛のヘアブラシと自分で買ったハンカチでした。
はっ!コンパクトは?!
コンパクトを開けると鏡は見事に粉々になっており、ポシェットの中に鏡の破片が散らばりました。
あーーーーもーーーーー・・・
鏡が割れただけなら、きっと彫金師さんに直してもらえるよね...
鏡が割れたのはこれが最初ではありませんでした。
ポシェットを逆さにして割れた鏡の破片を綺麗に捨ててコンパクト本体をポシェットにしまい、とりあえずヘアブラシでブラッシングすることにしました。
五年前、第七霊災のちょっと前に「女の子は髪を大切になさい。」と、ママからもらったヘアブラシでした。それから髪を伸ばし始めたのでした。
おはようママ。今日もなんとか生きてますよぉ。
昨日テーブルの上に置いてあったお菓子はウォールナッツ入りのビスケットが三枚でした。
一枚は昨日食べたので残りは二枚です。朝食に一枚食べて、最後の一枚はハンカチに包んでポシェットにしまいました。
今はこれが全財産なのでした。
冒険者としてはかなり危険な状況だとは思いましたが、無くしたバックパックは中身すら記憶していないので諦めがつきます。
身だしなみを整えてミューヌにお礼を言いに行きます。
ミューヌ「お礼なんていいから、ベントブランチ牧場に届け物を頼むよ。そして人手が足りないって言ってたからついでにケーシャを手伝ってあげてくれないかな?」
エッダちゃんが一文無しだとひと目で見抜いていたミューヌの心遣いでした。
牧場の手伝いをしてお駄賃をもらえれば、また少し生きながらえる事ができます。
午前中いっぱい 畑の手伝いをして、午後からラヤ・オ・センナに会いに南部森林へ行きます。
バスカロンドラザーズでひと休みして、ロウアーパスに着いた時にはもう日が暮れかけていました。
根渡り沼にかかる吊り橋のロープをしっかり握りながら北口から登っていくと、左側にすぐラヤ・オ・センナの姿が見えました。
岩を飛び移り、声をかけます。
ラヤ・オ師匠。ご無沙汰してます。
ラヤ・オ「あなた久しぶりね。死んだかと思ったわ」
ええ?もしかして私を覚えてらっしゃるんですか?
ラヤ・オ「まさか!冒険者の顔や名前なんていちいち覚えてないわ。でもエーテルを見れば私にはあなたの状況やステータスがわかるのよ。」
あそっか...私...事故...で、パーティーメンバーや記憶やいろいろ全部無くしちゃって...ひとりぼっちになっちゃって、これからどうしたらいいかと思って...
ラヤ・オ「ふーん...事故ねぇ...でもあなたスキルはリジェネすら覚えてないくせにレベルは上がりきってるじゃない。それは一体どうしたのよ?」
それは...いつも一緒にいた...えと...ア、ア...アヴィールが! そうアヴィールがとても強かったので!!
(そうだ!私はアヴィールと一緒にいたんだ!)
ラヤ・オ「で、その人は?」
あ...多分もう...
ラヤ・オ「ふーん。その人は勇敢に戦って死んだのね?それであなたはひとりぼっちになったと。で、その人が命をかけて戦ってる時にあなたは何をしてたのかしら?」
え、えーと...んーと...勝利を祈って応援してた...かな?
ラヤ・オ「ふーんなるほど。いつもそうだったのね?それであなたは何もしないでもレベルは上がったと。はぁ...勇敢に戦って死んだあなたのパートナーの魂が無事ハイデリンに行きますように...」
あ...はい...本当に...
ラヤ・オ「あなた...バカなの? あなたがパートナーを殺したのよ。」
ええ!そんな!彼は私の一番大切な人でした!!私が殺しただなんて!!
ラヤ・オ「悪いけど、今のあなたに私ができる事は何もないわ!あなたはもう十分レベルが高いんだから幻術とパーティー戦闘の基礎を一から学び直してらっしゃい!!」
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