ep.10 修復するエッダちゃん。
くっふっふっふっ...!
ローズ先生から、私でも作れそうな服の型紙をコピーしてもらっちゃった!!
今度普段着を自分で作ってみよう!
やりたい事、やれる事がちょっとづつ増えて嬉しいエッダちゃん。
スキップで裁縫師ギルドから彫金師ギルドに向かうのでした。
でも...技能は先生に教わって練習すればいつか身につくかもしれないけれど、あの斬新な発想は一体どこから来るのかと、やはり疑問に思う。
私にもいつか、今まで誰も見たことないような素敵なドレスとか作れるようになるのだろうか?
彫金師ギルドは裁縫師ギルドのすぐ近くだった。
受け付けでコンパクトの修理を頼み、旅に出る前から考えていた事を話してみる。
あのー...私は旅の冒険者なので、もしかしたらまたコンパクトを壊しちゃうかもしれなくって...もし出来たら自分で修理出来るように彫金の技術を教わりたいと思うんですけど...
それはいい考えですね!ぜひギルドマスターのセレンディピティーにお話ください!
ありがとうございます!
こんにちは。ギルドマスターのセレンディピティーさんですか?
コンパクトを自分で修理したいので色々教えて欲しいんですけど...
いいですよ!
でも修理だけを教える事は出来ないんですよ。たとえば、再組立を前提に分解するには、普通にちゃんと組み立てる以上のスキルが必要なんです。
だから、よかったら基礎から習ってみませんか?
はい!ぜひお願いします!!
あ、ちょうど私の仕事の終わる時間だった。
よかったらお話ししながらご飯でも一緒に食べませんか?
あっはい。
いいんですか?
いいのいいの!着替えて来るので外でちょっとだけ待っててください!
ギルドの外で待ってると、すぐにセレンディピティーさんがやってきた。
買い物したいのでマーケットに付き合ってもらっていいですか?
いいですよ。行きましょう!
マーケットがどこだかよくわからないのでとにかくついて行く事にする。
彫金師ギルドから、サファイアアベニュー国際市場はすぐそこだった。
マーケットで何を買うんですか?
お夕飯の材料?
いいえ、趣味のアクセサリー作りの材料よ。
え?お仕事で毎日彫金やってるのに、終わってからまだやるんですか?
そうよ!
だってさ、可愛いアクセサリー作るのが好きで彫金師になったのに、何でも自分の好きな物作っていい訳じゃないし、ギルドマスターになっちゃうと、色々別の仕事も増えるでしょう?
だからね、100%趣味でやるアクセサリー作りが、私のストレス解消なのよ!
ほぇー...!!
じゃもう起きてる間ずっと彫金やってる感じなんです?
んーそうね!くっひっひ!
と、楽しそうに笑うセレンディピティーさん。
彫金のストレスを彫金で癒すんだ...!!
考えてもみなかった発想だった...
好きな事を仕事にするってそういう事なのか...
ローズ先生と同じく、セレンディピティーさんも、その道のスペシャリストなんだなって思う。
あっ私も服の材料を買っておこう!
ローズさんに裁縫習ってるの?
じゃあ彫金の基礎的な材料も買っおいてね!レシピもいくつか教えてあげるから。
やったあ!
マーケットの料理屋でフラットブレッドを買って、近くのベンチに2人で座る。
あっこれを先にやっちゃいましょうか!
フラットブレッドをもぐもぐしながらセレンディピティーさんがバッグから取り出したのは、私が彫金師ギルドの受け付けに預けたコンパクトだった。
これあなたのでしょう?
えーっと...エッダさんね?
面白そうだから持ってきちゃった!
まずは壊さないように分解...っと。
見慣れない工具を使って真鍮の留め具と蝶番をあっという間に全部綺麗に外してしまう。
外した部品は専用の洗浄液で綺麗に洗う...
とても手際が良い。
んーっ?
これってもしかして誕生日のプレゼントですか?
えっ!!分解しただけでそんな事までわかるんですか?
あははっ!まさか!
ほら...よく見てください...
鏡が付いてた所の裏に薄ーく文字が書いてあるでしょう?
...あ、ほんとだ...!
薄くて全然気が付かなかったけど、確かに薄ーく「Happy birthday Edda!」と書かれてあった。
しかし...それは左右反転した鏡文字だった。
これ...どういう事でしょうね?
鏡の裏で鏡文字なんて...
見えないし、読めないし...。
そーですね...
もしかして、これって前にも鏡が割れて修理した事あります?
あっはい。あります!
ふむ...わかりました。
これには...何か秘密がありそうですね...
ごめんなさい!!ちょっとギルドに戻って調べてみます!!
えっ?えっ?
もう仕事終わったんじゃあ?
うん!だからね、これはただの個人的趣味ですよ!!
じゃあまたねエッダさん!
ササッと買い物した荷物とコンパクトをまとめると、パチっとウインクしてセレンディピティーさんはギルドの方へと走り去って行った...。
すごい...
うん。
なんだかすごい人だ...
きっと彫金が好きで好きでたまらないんだなぁ...
ともあれ、コンパクトは修理してもらえそうでよかった。
砂時計亭に泊まって裁縫と彫金の練習をしながらコンパクトの修理が終わるのを待とう...
そして、二日後の早朝、まだ暗い内にオトパ・ポットパさんに起こされたのだった。
お客さんが来ていると言うので急いで出ていくと、セレンディピティーさんがクイックサンドで待っていた!
あっ!エッダさん!!出来たんです!コンパクトの修理が!
まぁ!わざわざありがとうございます!
でもどうしてこんな朝はやくに?
うふふっ!エッダさんにぜひ見てもらいたい物があるんですよ!
さぁこのコンパクトの鏡を朝日にあてて、影になってるあっちの壁に光を反射させてみてください!!
言われた通り朝日を反射して壁に光あてると、コンパクトの形に丸く光があたる...
そして...
その光の中に何か文字が見える!!
「Happy Birthday Edda!」
反対向きの鏡文字ではない!ちゃんと普通に読める!!
わぁっ!!なんですかこれ???
魔法ですか?
うふふっ!!
これはね、魔法じゃないのよ!
魔鏡っていうのよ。
魔鏡?
そう!鏡の表面を細かく削って光を反射したときだけそれが見えるように
してあるのよ。
へー!そーなんですか!!
でも近くで鏡を見ても文字なんて読めませんね...
ふふっ!面白いでしょう?
はい!でもどうしてこれを?
これはね、私の師匠コルベルヌの作品だったんですよ!!
えっ?でもこれはイシュガルド製だって聞いてますけど???
そう。表向きはね!
と、ウインクするセレンディピティーさん。
これは霊災のちょっと前かな?
イシュガルドの工房からの下請けで受けた仕事なのよ。
それに私はこの魔鏡コンパクトに見覚えがあったの...
えっ????
これは私が13歳の時に、彫金師ギルドで初めてコルベルヌ師匠に出会った時に見せてもらったコンパクトなの。
コルベルヌ師匠が「面白い物を見せてあげるよ」って言って、今と同じように朝日を反射して光の中に浮かぶ文字を見せられて、私は彫金の魅力の虜になったわ!
あれからもう6年になるかしら?
あら?
エッダさんは今おいくつかしら?
はい!私は今年で16歳です。
そのコンパクトは10歳の誕生日に両親からいただいたんです!
そっか...私は完全に忘れていました...!
実はこれを受け取ってすぐに幼なじみの男の子に壊されちゃって、多分私はこの魔鏡の文字を見るのは人生二度目...かな!
なるほど...
きっと前に修理を依頼された彫金師は魔鏡に気づいたけどそれを再現出来なくて、仕方なく次に修理するであろう未来の彫金師に希望を託したのね。
それが裏側の鏡文字。
裏側の鏡文字が正しく見えるのはいつ?
光が反射した先よ!
ほー...なるほど...
全くわかっていなかった...
ふふっ!上手く修理出来なかった前の彫金師を恨まないであげてね。
当時これが作れたのはエオルゼアではコルベルヌただ一人だったんだから!
私は過去の師匠の製作目録を探して、ついにその魔鏡の完全再現に成功したのよ!!
おめでとうございます!
あっ!もしかして一昨日別れてからずっと??
そうよ!お礼を言いたいのは私の方だわ!
師匠の作品をこうして完全に修復出来るチャンスをもらったんだもの!
あ、私の事はセレンって呼んでね。
そういえば...!
あなたこのコンパクトを修理出来るようになりたいって言ってたわよね?
ええっ?これはちょっと...
無理とは言わせないわよエッダ!
私がみっちり仕込んで、あなたがいつかこの魔鏡を自分で完全修復出来るようにしてみせるわよ!
覚悟しなさーい!!
えええー!!!
素敵なお姉さんが出来たみたいでとっても嬉しいエッダちゃんなのでした!