ep.1 生還するエッダちゃん。
ダンジョンに響き渡る勝利のファンファーレ。
惨劇霊殿タムタラの墓所ーCOMPLETEー
そこからエッダちゃんの本当の冒険が始まるのでした。
冒険者はみな宝を拾って街へと帰り、パイヨ・レイヨは命からがら逃げ、リアヴィヌの魂はハイデリンへと去り、アヴィールの呪われた頭部は塵となり、エッダは地の底に落下しました。
ところで。
私は彼に名前を呼ばれるのが好きだ。何をやってもドジで間抜けでどんくさい私を、彼はいつも、怒鳴りつけつつも、手を引いて一緒に歩んでくれるから。
そんな人はこの世にきっと彼だけだ。
大声で私を怒鳴ったり罵ったりするけど、彼はいつでも私を見ていてくれるし、何があっても私を見捨てていなくなる事など絶対ない。
だから彼が私の名前を呼ぶ時、怒鳴られながらも、私は心の中でこっそり微笑むのだ。
エッダ!
はーい。ふふっまたよんでる。
エッダ!!
はいはーい。エッダちゃんはここですよぉ...
エッダ!!!
はいはーい。しつこいぞぉ。
あのねアヴィール。いつか私が死ぬ時もこうやって私の名前を呼んでね。もしも私の耳が聞こえなくなってたら私をぎゅっと抱きしめて叫んでね。そしたらきっとあなたの声の振動が私に伝わるから。
エッダ!!!!
そうそうそんな感じ。ありがとうアヴィール...
おきろ!!エッダーーーー!!!!!!
振動が伝わったのか、別の何かが伝わったのか、今までぴたりと動きを止めていた心臓が、石ころの様にギューッと収縮したかと思うと、爆発的に膨らみ、再び力強く動きはじめました。
ごおおおおおっという音をたてて全身の動脈に再び血液が流れる。
今まで生きてきた十六年間の人生の中で経験した事のない全身の痛みで意識が戻る。
叫び声をあげたいが声が出ない。呼吸もできない。悶絶しながら全身の力を振り絞って身をよじり、ケダモノのような叫び声と共に喉に詰まった血の塊を吐き出す。
おえええ...
ひゅーという音と共に久しぶりに喉に空気が通り、エッダの肺を膨らませた。
うあぁぁ...
顔面を地面に押し付けたままうめき声をあげるエッダちゃん。
うぅぅ...死ぬぅ...
という声と共にエッダちゃんは死の淵から生還した。
あれーなんだっけ・・・
痛いよ・・・全身痛い・・・
私はどこで何をしてたの・・・? アヴィールは・・・?
はっ!アヴィール!!!そだ!アヴィールは!?
起き上がって見回すと、アヴィールがいた場所には冒険者の魔法によって黒く焦げた跡があるだけでした。
髪の毛一本でも...ないのね...
はぁ...
終わった...私の人生終わった...
悲しいけど、つらいけど、今までのような暗い情念のような物はエッダちゃんの心からはもう無くなっていました。
私がやれる事はやり尽くした...よね。
私がやれる事はもう無くなったんだよねきっとこれ...
かえろ...でもどこへ?
故郷?...
あれ?今までの事が色々思い出せない・・・
とりあえずタムタラから一番近いグリダニアへかえろ...
でも・・・さっき私の名前を呼んで起こしてくれたのは誰?
次→ep.2 https://eddapureheartif.hatenablog.com/entry/2019/05/02/064318